シェパードトーン(無限音階)

2003/4/6 平野拓一

シェパードトーンについて

ピアノの鍵盤などをドレミファソラシド・・・と弾けば音の高さ(ピッチ)はどんどん高くなり、そのうちそれ以上高い音を出せなくなってしまう。ところが、オランダの版画家エッシャー(1898〜1972年)が描いた無限階段のように数個の音で無限に音が高くなり続けるように知覚的に感じる音階を作ることができる。それは考案者R.N. Shepardの名前を取ってシェパードトーン(Shepard Tone)あるいはシェパードの無限音階と呼ばれる[1] (pp.127-129)。

シェパードトーンを聞いてみよう!

倍音スペクトルの違い WMA ファイル
シェパードトーン(無限音階) sh_tone1.WMA (137KB)
正弦波
(無限音階にはならない)
single_freq.WMA (137KB)
シェパードトーンの音色と似ているが
各音のスペクトル形は同じ
(無限音階にはならない)
same_spectrum.WMA (114)
シェパードトーン(無限音階)
スペクトル包絡線一定(おまけ)
sh_tone2.WMA (114KB)

Mathematica によるシェパードトーンの作成法 (HTML)

前の3つ(sh_tone1.WMA, single_freq.WMA, same_spectrum.WMA)について

 ドレミファソラシ(CDEFGAB)を2回繰り返してドレミファソラシドレミファソラシと鳴らしています。シの後ドの音が鳴るとき、シェパードトーンだと音が上がり続けると思って聞いていると実際の基本周波数は低いのに高い音になったように感じると思います。ダウンロードしてメディアプレーヤーなどの自動繰り返し機能を使って聞いてみてください。

 でも、厳密にはそれは倍音に着目した聞き方で、基本周波数を意識して音色の低い音(基音)の成分を意識的に聞いていると下がったようにも感じます。また、この倍音スペクトルだとFからGに変わるときの音色変化が若干大きすぎて、音の高さが下がったように聞こえてしまいます(あまり微調整していないので)。それも含めてうまく無限音階を聞くにはFからGに変わるところでは音色の低い音を意識して聴き、BからCに変わるところでは音色の高い音を意識して聴くと無限に音が高くなり続けているように聞こえます。

 純粋な正弦波や、スペクトルが同じ音色だと上がると思って聞いてみてもどうしても音が下がるように聞こえると思います。この実験から、人間が感じる音の高さ(ピッチ)は基本周波数(基音)だけでなく、倍音の構造(スペクトル)、つまり音色にも若干依存していることがわかります。

Mathematica によるアニメーション作成法 (HTML)

sh_tone2.WMAについて

 この音色では、音の低い周波数成分と高い周波数成分を分離して聞くことができ、高い音の成分はどんどん高くなりつづけるように感じると思います。

 実は人間は同じ振幅でも3000〜5000Hz程度(だいたい)の周波数の正弦波が大きい音に聞こえ、低い周波数と高い周波数はそれよりは小さい音に聞こえるという特性がある(ラウドネス曲線)ので、スペクトルにわざわざ中間周波数を強くする重みを与えなくても自然にそのような特性に近くなる。

 しかし、やはりこのファイルの音を聞くと高い音も良く聞こえ、原理が違っているかもしれない。この原理は人間が聞くことができる聞こえない程の高い周波数(聴くことができるギリギリの周波数)まで含み、だんだんスペクトルが高い方へ移動しているから心理的にずっと音が高くなり続けると錯覚しているのではないだろうか。(考察不足)


水色の部分が可聴周波数だと思ってください。

解説ドキュメント

参考文献

[1] 日本音響学会(東倉洋一、赤木正人、阪上公博、鈴木陽一、中村健太郎、山田真司):音のなんでも小事典、講談社ブルーバックス、2002年


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