うなり、トレモロについて

2003/3/12 平野拓一

うなりトレモロ(tremolo)について説明する。



1. 正弦波でうなり、トレモロを体験する

波形 WMA ファイル
1 880Hz
sin(2π 880 t)
sin_880.WMA(36KB)
2 880Hz と 890Hz の和
sin(2π 880 t)+sin(2π 890 t)
sin_880_890.WMA(36KB)
3 885Hz と 5Hz の積
2 sin(2π 880 t) cos(2π (-5) t)
sin_885_5.WMA(36KB)

2と3は同じ音に聞こえるはずです。


2. トレモロを利用して音に厚みをつける

コンピュータミュージックではFM音源などを使うと音に厚みが足りないなあと 思うことがあります。そのようなとき、簡単に音に厚みをつける方法として うなり現象(トレモロ)が利用できます。 実際には同じメロディーを演奏するパートを2つ用意して、片方だけ ピッチ(音の高さ)をほんの少しだけ変化させます。 すると音に厚みが出ます。

トレモロ有りと無しを実際に聞いて体感してみましょう。 FM音源で聴くと違いが分かりやすいのではないかと思います (本当は単音で鳴らしたり、ビブラフォンなどの音色の方が トレモロ有り無しの違いがわかりやすかったかなあと思います)。

曲:「希望の道」(西村由紀江)
MIDIファイル (SMF)
クリックして演奏開始↓
MMLファイル (参考)
トレモロ無し kibou88.mid (8KB) kibou88.mml
トレモロ有り kibou88_tremolo.mid (15KB) kibou88_tremolo.mml


3. 音に奥行きと潤いを与えるのは「ゆらぎ」である

持続楽器の持続音について調べる。 Roland SC-88VL の楽器の音色をそのまま聞いた場合と、 持続音の周期波形の1周期を切り出してそれを規則正しく並べて 再生した音を聴きくらべてみよう。 waveファイルの加工法は 音の周波数解析(音色について)参照。

なぜか規則正しい音はいい音に聞こえず、無機的で音に潤いがない。 「本当に1周期のコピーになっているのか?」と思うほど違った音色に聞こえる。 実際私も作っているときは「どんなにそっくりな音が現れるんだろう」とワクワク しながら作っていたのだが作り終わって聴いてみると「あれ?何?プログラム間違えた?」 と思うほど生の音に比べて貧弱な音になってしまってガッカリした。 でも、上のドキュメントに波形を示したように、ほぼ周期波形でほんのわずかな ゆらぎしかない。しかし、そのゆらぎしか違いを見つけることができず、 これが音色の奥行きと潤いに大きく寄与しているに違いない。 一方生の音(SC-88VLはPCM音源であり、結局生の楽器の音を録音して再生 しているから生の音と言ってもいい)は波形が揺らいでいるが、 いい音に感じる。これら2つの波形の差といえばゆらいでいるか、 ゆらいでいないかという点しか見当たらない。 よって、(振幅や周波数などの)ゆらぎが音に奥行きと潤いを与えている のではないかというのが結論である。

楽器名 (1) SC-88VLのサンプリング音

(奥行きと潤いのある音)
(2) 規則的な周期波形

(無味乾燥な音)
フルート flute.WMA(77KB) flute_1.WMA(36KB)
バイオリン violin.WMA(89KB) violin_1.WMA(36KB)
トランペット trumpet.WMA(71KB) trumpet_1.WMA(36KB)
チャーチ・オルガン church_organ.WMA(83KB) church_organ_1.WMA(36KB)


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