シェルクノフの多項式法 (Schelkunoff Polynomial Method)[1] はヌルを所望の方向に向けるのに便利な方法である。 ただし、ヌルが所望の方向に向くのは確実だが、ビームの形がどのように なるかは定かではない。
アダプティブアレーアンテナのアルゴリズムでは大きく分けて ビームを形成する方法「ビームフォーミング」と、 干渉(妨害)波方向にヌルを向ける「ヌルステアリング」の2つがある。 一般に後者の方が簡単であり、現在はヌルステアリングアルゴリズムが使われることが多い。 また簡単という理由だけでなく、強い干渉波があるときにはとりあえず干渉波の方向に ヌルを向ける方が効果的である。 シェルクノフの多項式法は直接アダプティブアレーアンテナに使われてはいないが、 複数の干渉波に複数のヌルを向けて干渉波を抑圧しようとするとき、 次に述べる重要な知識を知っておく必要がある。
シェルクノフの多項式法ではアレーファクタを多項式として考えることにより、 z 軸上に並べられたN 素子等間隔アレーのθ=0°〜180°の間に作ることができる ヌル点の最大数は N-1 であることが明らかとなる。 N-1はアダプティブアレーアンテナでは抑圧できる干渉波の数を表しており、 アレーの自由度と呼ばれる。 一様分布、ドルフ・チェビシェフ分布、テイラー分布など他の種々の励振分布 を使ったアレーでもθ=0°〜180°の間に存在するヌルの数は素子数より1つ 少なくなっている(STOP ボタンを押してアニメーションを停止させて確認してください)。 サイドローブを無くす二項分布には当てはまらないが、それは重解を持っていると 考えれば納得できることである。
アレーアンテナの指向性を見たときにθ=0°〜180°の間ヌル点の数(例えば6個)を数えて 「これは7素子アレーですね」なんて言ったら「(うっ、この人できる)」 と思われるに違いない(「(知ったかぶりして)」と思われるかもしれない)。
linear 指向性 | dB 指向性 |
極座標表示 | 重み係数 |
ヌル形成角 | 60°, 90°, 180°と「0°〜180°まで変化させる角度」 |
---|---|
素子数 | 5 (θ=0°〜180°までのヌル数+1) |
素子間隔 | 1/4 波長 |
指定した方向にヌルが出来ていることがわかる。
θnull=0° | θnull=60° | θnull=120° | θnull=180° |
[参考文献]