2022.6.29 Takuichi Hirano
アンテナの(遠方界)指向性を測定する際、被測定アンテナ(AUT; Antenna Under Test)とそれから放射される電磁波を受信するアンテナの距離はどれだけとればよいだろうか?指向性は距離を一定に保った場合の角度特性(角度による強度・位相の違い)を測定する。指向性は通常、遠方界指向性の意味である。遠方とは、Rが十分大きくて、RからΔR増やしてR+ΔRの距離で指向性を描いても変化しなくなる程度大きなRである必要がある。逆に言うと、Rが小さい場合はRに応じて指向性が変化してしまう。これは、受信店でアンテナを見た場合に放射されるアンテナが大きく見える場合はアンテナ両端から放射される電磁波の干渉の条件が変わるからである。距離が変わっても指向性はほとんど変化しない遠方界領域はフラウンホーファー領域、距離によって指向性が変わる近傍界領域はフレネル領域とも呼ばれる。
上の図のように被測定アンテナがあるとし、それを包み込み最小の球の直径をDとする。アンテナ構造体を考えたとき、任意の2点をとったときの最長、つまり、最大の対角の長さがDに相当する。R離れた点からアンテナ、または直径Dの球を見た場合、立体角を考えて、点のように見える場合は、D内から放射される電磁波の位相差は付かないから、それ以上距離Rが離れても指向性Rに依存しなくなる。現実にはDが点に見えるようなR=∞という条件で実験はできないので、ある程度のトレードオフが必要となる。その条件として(人為的な定義が入っているが)最大位相差がπ/8
rad (22.5°)以下を採用しているわけである。このようにDが大きくなると遠方界指向性の測定(あるいは計算)に必要な距離Rは大きくなる。例えば、パラボラアンテナやアレーアンテナなど、高利得のアンテナを測定する場合にはダイポールアンテナなどの低利得のアンテナ測定よりも距離を離さなければならないことに注意する必要がある。
実際には被測定アンテナAUTも、受信(センサーとして使う)アンテナも有限な場合が一般的である。それぞれのアンテナを包み込む最小の球の直径をそれぞれD1, D2とする。それぞれの球の中心を結ぶ距離Rの線に対して直交する面内のみ動いたときの最大距離を考えると(ここが近似だが、主に平面アンテナや開口面アンテナが用いられるので)、最大距離差は上のようになる。つまり、センサアンテナが微小な点のときにおいてD→D1+D2と置き換えるだけでよい。
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