2025/8/21 T. Hirano
使い方に迷うことのメモです。
誘電正接(loss tangent, tanδ)と導電率(σ)は関係しており、独立ではない(参考資料)。どちらかの値と周波数を決めれば、もう片方が決まる。絶縁体に近い、損失が小さめの誘電体材料を扱う技術者は誘電正接での設定を好み、導電率が大きくなり、絶縁体とは言えなくなる材料(金属、塩水、損失が大きいシリコン基板など)を扱う技術者は導電率での設定を好む傾向がある。導電率の設定は材料定数のElectrical conductivityの欄で簡単に設定できるが、COMSOLでの誘電正接の設定には工夫が必要で、導電率の欄に次のように設定するとよい。
Electrical conductivity | (2*pi*emw.freq)*(sub_er*epsilon0_const)*sub_tandel |
ここで、sub_er, sub_tandelはそれぞれ材料の比誘電率、誘電正接である。pi, emw.freq, epsilon0_constはそれぞれCOMSOLで定義されている円周率、解析周波数、真空の誘電率である。
導電率が非常に高い金属(通常の金属)は空間にメッシュを切って真面目に解析すると非常に解析の効率が悪い。なぜならば、高い導電率中では波長が非常に短くなるため、それに伴って細かいメッシュが必要になるからである。そのような場合は、金属は表面インピーダンスで近似する(逆に、近似精度が高くなる)方法がある。
COMSOLでは、解析領域内に薄い(導電率が大きな)導体がある場合(例として、誘電体基板の銅箔など)に、表面インピーダンス近似でモデル化するためには、Transition Boundary Conditionを設定する。導体内部を解析しない場合においても、薄い導体を形状をモデル化してしまうと、薄い面の部分を四面体で分割してメッシュを切った際に、メッシュ四面体のアスペクト比が非常に大きくなり、連立一次方程式の反復解法で収束が悪い、または収束しないという問題が生じることがある。また、メッシュ四面体のアスペクト比を1に近くしようとすると、薄い面付近は非常に細かいメッシュとなり、必要以上に計算時間がかかるという問題が生じる。そのため、非常に薄くて、導電率が高い導体は無限に薄い面のままモデル化し、表面インピーダンス導体の効果を設定する方法をお勧めする。その場合、金属は物理的に薄くても、表皮厚(skin depth)の数倍程度大きな厚さになっている必要がある。そうでないと、表面インピーダンス近似の精度に問題があるからである。Transition Boundary Conditionの設定では表皮厚の数倍のときには"Electrically thick layer"にチェックを入れておけばよい(無限に厚いと仮定。それでも電磁波は急激に減衰するので無限に厚いモデルでも良い近似である)。この場合、Transition Boundary ConditionのHelpにある式において、\(1/\tan(k d)=j, 1/\sin(k d)=0\)となるので、\(Z_S=-\sqrt{\frac{\mu}{\varepsilon}}, Z_T=0, E_{t2}=0\)となり、\(J_{S1}=\frac{E_{t1}}{Z_S}, J_{S2}=0\)となる。
なお、解析領域の周囲境界(端面)でインピーダンス境界を設定する場合はImpedance Boundary Conditionを用いる。
裏側のオブジェクトを選ぶ際は、一度手前のオブジェクトを隠す(選択候補から外す)。そのためにはビュワーの"Click and Hide"(1)をクリックしてから隠したいオブジェクトをクリックすると消える(選択できなくなるだけで、オブジェクトが削除されるわけではない)。この状態で、もう一度"Click and Hide"(1)をクリックすると再度オブジェクトを選択できる状態になるので、選びたいオブジェクトに届くまで手前のオブジェクトを見えなくしてから選択する。最後に、選択の表示状態を元に戻すには"Reset Hiding"(2)をクリックすればよい。
・Model BuilderのMeshを右クリックしてSizeを選ぶ。
・Size指定できる小項目を選び、Geometric Entity Selection項目のGeometric entity elvelを"Entire
geometry"から指定するオブジェクトからDomainを選び、メッシュサイズ指定したいオブジェクトを選択する。
・Element Size項目でCustomを選び、Maximum element size(メッシュの最大辺の長さ)を所望の値に設定する。
・最後にMeshを右クリックしてFree Tetrahedralをメッシュ生成の最後に入れておかないと上手くいかない。(重要!)